第二回会議 (2015)

2015年2月12日-13日

於 京都大学国際交流センターKUINEP講義室

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《発表要旨》

研究会Ⅰ<事例報告>

  • Tran Kieu Hue(ハノイ国家大学外国語大学)
    「ベトナムにおける日本研究」
    古くから交流の歴史がある現在日越関係は深くなってきて戦略的なパートナーシップとなっている。相互理解を深めることを目的とした文化交流・研究・教育における様々な活動が行われている。
    ベトナムでは日本語教育機関・日本研究機関で日本語教育、日本研究が盛んになっている。日本に関する日本研究拠点が大学に設置されている。
    しかし、各機関の間の連携性がほとんどなく、研究成果・情報の共有がほとんどできない。研究者の関心をひく大型プロジェクトの数が限られている。特に、今までの研究はほとんど日本に関するベトナム研究者の一方的研究だ。現在のベトナムにおける日本研究事情を分析し、各機関の連携性を図で明確した上で、日本研究ネットワークの効果の向上に貢献できる具体的提案を述べていきたい。
  • 阮 艶 [Yan Ruan](南京大学)
    「日本人留学生のための短期中国語研修プログラムについて」
    南京大学海外教育学院は50年以上にわたって、外国人留学生向きの中国語教育を実施してきました。現在、長期、短期中国語研修クラス、外国人留学生対象の漢言語専攻および中国語教育専攻を設けられています。近年、南京大学の外国人留学生総人数が激増している一方、日本人留学生の数が減りつつある傾向です。
    90年代以降、南京大学に留学した経験を有する先生方々が、自発的に学生たちを引率し、こちらで短期中国語研修を始めされたようです。最近、元引率先生の退官、短期研修の参加者人数が極めて少ない場合、研修実施を中止せざるを得ないケースが出てきました。より多くの優秀な学生を招き、南京大学に留学して頂くため、様々な方法を試し、柔軟性のある短期留学プログラム作りに工夫しました。具体的な内容は以下のようです。
    1.合意書を締結することによって、授業の内容や宿泊先や双方の責任範囲などを決められ、たとえ引率者いなくても研修実施が可能です。
    2.参加者人数に達していない場合、他校との共同クラスを作ります。
    3.夏休みの団体に限らず、個人の短期研修にも対応できるようにしています。例えば、秋季と春季の長期研修クラスに数週間での編入が可能になりました。
    4.2011年から、名古屋大学、京都大学で中国語スピーチコンテストを開催し、入賞者に長期&短期留学の奨学金を提供します。
    5.団体側の要望に応じて、ユニークな研修プログラムを作ります。例えば、東大のTLP(Trilingual Program)のサマースクールの実践例があります。
  •  南 基正 [Ki Jeong Nam](ソウル大学)
    「韓国における日本研究の現状と課題:日本研究のアジア・ネットワークを目指し」
    現在、韓国の日本研究は、量的発展にともなう、質的進化を遂げることが要求されている。その質的進化は、日本研究のグローパル・スタンダードを意識しつつ、その設定に積極的に参画することで遂げられるだろうと思われる。しかし、そのためにはまず、これまでの日本研究を振り返り、その成果を加減なく正当に評価しその上で課題を的確に見出すことが必要である。本報告は、その一環として、戦後の韓国における日本研究の特徴を見出すことを目的とし、地域研究としての日本研究を先導するうえで重要な一翼を担ってきた日本政治研究に焦点を合わせ、その成果と課題を論じようとするものてある。その際に主に分析する対象は、現代日本学会と当学会が1979年から発行してきた『日本研究論叢Jである。
    その特徴を明らかにするためには、その縦横の幅と奥行きをまず確認しておく必要がある。即ち、戦後の日本研究ヘ引き継がれた歴史的遺産と、戦後の日本政治研究を取り巻く環境として隣接学問領域における日本研究の現状を概観しておく必要がある。それを背景にして、初めてその特徴化が浮かび上がってくるだろう。したがって、本報告は次のような構成をとる。以下、第二章では、前近代朝鮮と現代韓国における日本論の歴史的展開を辿り、第三 章では、現在の韓国における日本研究の概観を紹介する。第四章では、現代日本学会と『日本研究論叢』を題材として、政治学を手法とする日本研究の展開と現状を把握する。そして結論では、これからの韓国における日本研究の望ましいあり方について、主にグローハル化戦略と、そのスタートラインとして考えられるアジアにおける研究ネットワーク形成と関連し、提言する ことにしたい。
  • 周 維宏 [Weihong Zhou](北京外国語大学)
    「北京日本学研究センターの日本研究および教育実践」
    北京外国語大学の日本学研究センターは中国で唯一の中日政府の直接な協力を得た日本語教育を基礎に全方向の日本研究人材を育成する機関です。設立から今年まではすでに30年間たちました。いまは大学院を中心に研究、教育、情報を三位一体の中心機関に成長してきました。この会議を借りて本センターの特徴や直面する問題点などを皆さんと交流しようと考えます。
    一、本センターの由来と歴史
    本センターの前身は1979年の大平首相の訪中によって発足された『大平学校』(日本語教員研修コース)でした。1985年から日本語教員研修コースと平行して日本研究の準院生コースを設立、1990年から正式な日本研究修士コースを完成させた(定員20名)。2005年にさらに修士コース定員30以上、博士コースも10名程度に拡張した。
    二、本センターの現状
    いま本センター学生は修士課程六専攻(日本語、日本語教育、日本文学、日本文化、日本社会、日本経済)定員35名と博士課程10名となっており、専任教員は日本語3人、日本語教育二人、日本文学二人、日本文化3人、日本社会二人、日本経済二人とあわせて14名になっております。日本からは主任教授一人(短期出張)と事務主任一人(常駐)と派遣している。他には毎年合わせて6人の日本人先生を集中講義に派遣される。
    三、直面する問題
    1構造改革 2研究進化 3院生就職先の確保
  • Himawan Pratama(インドネシア大学)
    「インドネシアにおける日本社会文化研究の傾向」
    戦後インドネシアにおいて日本語や日本社会文化の研究及び教育が盛んになってきた。高等教育レベルでは日本に関する研究に携わる短期大学・大学・大学院が多数あり、学生数も年々増加している。これはつまりインドネシアの日本という国への高い関心を示していると言える。言い換えれば、インドネシアにおいては日本を理解しようという機運が高まっているとも言えよう。言うまでもなくある対象、特に社会文化(言葉も含めて)、を理解するにはその対象との接触は必要不可欠である。それは社会文化には時間がたつにつれて変化するという特徴があるからである。日本社会文化に関する研究も例外ではない。しかしながら現状を見るとインドネシアの日本社会文化研究者や学生は、直接日本社会と接触の機会が乏しく、文献研究に頼っている。むろん、文献研究という方法は過ちではない。けれども、文献のコンテクストを問わず、文献を唯一の日本に関する知識源にすると、日本に対して固定観念を持ち、それらは日本のステレオタイプを形成してしまう恐れがある。そういう意味では、やはりインドネシアの研究者や学生を日本社会文化と接触させるプログラムが必要であろう。
  • Chomnard Setisarn(チュラーロンコーン大学)
    「タイにおける近年の日本研究動向」
    日本とタイは600年以上もの交流史があり、2007年9月には日夕イ修120周年のさまざまな事業が行われたのは記憶に新しい。両国の交流関係は政治、経済、文化の面ではもちろん、王室と皇室の良好な関係、また最近タイと日本で起きた自然災害の際における国民同士の励まし合う姿もその絆の深さを象徴しているといえる。交流をさらに発展させていくためにはお互いの理解を深める必要があり、そのためには学術交流は欠かせないと思われる。従って、本報告では、タイにおける日本研究、特に2006年に発足した「日本研究ネットワークータイランド」(JSN-Thailand」を中心に紹介しつつ、近年の研究動向と今後のあり方について考察したい。
  • Sandra Schaal(ストラスブール大学)
    「フランスにおける日本学研究・日本語教育―アルサズ地方の事例をめぐって―」
    周知のとおり、日本が社会、文化及び経済の領域における目覚ましい躍進を遂げて以来、日本学研究・日本語教育に対するヨーロッパの関心は増加するばかりである。現在のフランスも例外ではなく、大学のレベルでは、25校ほどが日本学・日本語教育を行っているが、多くの現場で学習者数増加が目立っている。
    本発表では、フランスにおける日本学研究・日本語教育の歴史と現状について考察する。より詳しく言えば、本発表は、フランスにおける日本学研究・日本語教育の歴史的経緯を簡単に辿ってから、150年以上の日仏間の交流の歴史をもっているアルザス(Alsace)地方の事例を中心にして日本学研究・日本語教育の現状を紹介することを目的とする。
  • 尹 相仁 [Yoon Sang In](ソウル大学)
    「外から外へ一韓国における日本文学研究・教育の現状と課題―」
    韓国の大学で日本語と日本文学の研究・教育が行われてからすでに半世紀が経つ。この分野において国内外の大学で博士号を取った研究者の数は、2014年12月の時点て1000人余り。韓国の日本研究者全体の5割強を占める数である。これはヨーロッパ日本研究協会(EAJS)において、日本語・日本文学研究者の占める割合の3割よりも遥かに多い。これだけの規模を誇りながら、韓国の日本語・日本文学の研究の存在感は、格段に薄い。それは取りも直さず、国内の知識社会や世界の学界のような『外』への発信において、目立った実績を積んでいないことに由来する。また、日本の学界のディシプリンを一極の中心として据えてきた慣行も、現在のような周辺化の窮状をもたらした大きな原因のひとつであろう。韓国の日本文学研究と教育が存在意義を認められ、なおかつ広く尊敬されるための代案には何があるだろうか。

研究会Ⅱ<研究発表>

  • 阿莉塔 [Alita](浙江大学)
    「日本旧植民地文学『蒙彊文学』論」
    本発表は、1931年から1945年にかけてのいわゆる十五年戦争の時期に、中国で存在した日本語文学の一環である「蒙彊文学」の全体的な状況を把握し、基礎的な事実の解明を目指すものである。
    1931年から1945年にかけて、日本は中国で十数もの傀儡政権を樹立した。そのうち「満洲国」と「中華民国南京国民政府」を除けば、「冀東防共政府」や「中華民国臨時政府」、一般的に「蒙疆政権」と呼ばれたものなどはほとんど知られていない。しかし、実際それらの傀儡政権下に日本語文学はさまざまな形で存在したが、その全体を網羅した研究がほとんど行われていない。つまり、「満洲国」を中心にしてさまざまに研究されているが、他の地域を含めて全体像を把握した研究は足りないのが現状である。従って、本発表は以上のような問題点を踏まえて、十五年戦争下に中国における日本語文学の一環として「蒙彊文学」を考察した。本発表はグローバル化の今日において、植民地文学研究は一国完結の状態から国際連携を目指す動きに呼応して行ったものである。
  • Vo Minh Vu(ハノイ国家大学人文社会科学大学)
    「第二次世界大戦期の日仏共同支配下における仏印華僑社会についての一考察」
    北部仏印進駐以後、日本は仏印政権を仲介して華僑の抗日運動を取締り、華僑の抗日的態度を払拭しようと試みた。また、1941年7月に南部仏印に進駐すると、日本自身もまた華僑工作を直接的に展開し、華僑を監視・取り締まるに至った。一般的に言えば、仏印における日本軍と大使府は、日本政府が決定した華僑政策の方針に沿い、華僑工作を実施していた。
    本稿は、日本の仏印華僑政策に対し、仏印華僑がどのように対応しようとしたのかという点に注目して考察するものである。また、その考察によって、仏印華僑の心境の変化を明らかにする。

 

《講義(SENDプログラム学生対象)要旨》

  • 呂 佳蓉 [Chiarung Lu](国立台湾大学)
    「ひらめきときめき オノマトペ」
    この講義では、一般語彙の特徴から、日本語のオノマトペの位置づけ、特徴、及び比喩的な拡張、応用などについて話題提供できたらと思う。そして、事例研究として、「叩く」動作に関連する擬音語・擬態語表現及びその翻訳を考察し、日本語、英語と中国語などの三言語に翻訳する際の注意点を述べる。
  • 朴 麗玉 [Lyu Ok Park](慶北大学校)
    「京都で学ぶ ─人形浄瑠璃との出会い─」
    本講義ではユネスコの「世界無形遺産」に登録され、日本国内だけでなく世界中からも注目されている人形浄瑠璃の世界にふれ、その魅力に迫る。
    人形浄瑠璃は江戸時代に誕生した伝統芸能の一つで、太夫・三味線・人形が一体となった総合芸術である。今日では「文楽」として上演されている人形浄瑠璃の歴史、特質について理解を深めるため、映像資料などを用いる。
    人形浄瑠璃に関する基礎的な知識を得た後は、『曾根崎心中』『心中天網島』などの名作を残した近松門左衛門を紹介し、作品を鑑賞する。特に「人形浄瑠璃に描かれたアジアと日本」に焦点をあて、『国性爺合戦』『大職冠』など関連作品が上演された時代背景を理解する。
    日本の伝統演劇の面白さを知り、伝統芸能を通じたアジア地域の交流についても考えるきっかけになってほしい。